2020年5月の投稿です。世の中ではすっかりPCRという言葉が浸透しましたね。私は医学部入るまで知りませんでした笑。生物選択の人は知ってるんですかね。
そもそもPCRというのは、目的のDNAを数百万倍に増幅する画期的な方法で、1980年代に確立し、1993年にノーベル賞を取った技術です。つまりウイルスに感染しているか知りたければ、その人の細胞を擦り取って、PCRでそのウイルスのDNA(RNA)を増幅し、検出すれば良いのです。
簡単に言いますが、当時はすごい発見だったわけですね。ただPCRは必ずしも正確なわけではなく、精度等に関して、また改めて取り上げたい内容ですね。
さて、本題のお酒に強いとはどういうことか、というテーマですが、これも遺伝子配列を読めば、その人のお酒の強さがおおよそ分かってしまうのです。つまり、遺伝子によってお酒の強さ(アルコール分解能)がおおよそ決まっているということです。
※今回は遺伝子に焦点をあてます。アルコールを分解する肝臓が大きい人(体格の良い人など)はお酒に強い傾向があります。
・アルコール分解の流れ
・あなたはお酒強い?
お酒に強いというのは、アルコール分解能力が高い、というのは予測がつくと思います。
しかし、「お酒強い=アルコール分解能力高い」では不十分なのです。
「お酒強い=アルコール分解能力高い+アルデヒド分解能力高い」というのが正確です。
むしろアルデヒドの分解能力の方が重要です。
アルデヒドはご存知でしょうか?高校の化学では必ず出てきますね。
アルコールは主に肝臓で分解されます。
(※アルコール自体は肝臓にとって毒なので、呑みすぎると脂肪肝、肝硬変、肝臓がんを引き起こす要因になります。)
分解の過程では、エタノール→アセトアルデヒド→酢酸という変化を辿るのですが、2つの反応にそれぞれ別々の酵素が関わっています。
画像引用元

エタノール→アセトアルデヒドは、アルコール脱水素酵素(ADH)
アセトアルデヒド→酢酸は、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)です。
エタノール、アセトアルデヒド、酢酸が生体にどのような作用を及ぼすか説明します。
↓
アセトアルデヒド:赤くなる、吐き気、頭痛、動悸
↓
酢酸:お酢の成分。エネルギー。
つまり呑んでハイテンションになるのはアルコールの作用、気持ち悪くなるのはアセトアルデヒドの作用、酢酸まで分解されれば解毒がされているので通常の状態に戻るというわけです。
さて、先程の酵素の話を組み合わせます。酵素はタンパク質で出来ています。タンパク質はDNAの設計図通りに作られます。したがってDNAの配列の違いがタンパク質の性質、つまり酵素の活性の違いになるわけです。
ADHの活性が高ければどんどんアルコールからアセトアルデヒドに変換されます。ALDHの活性が高ければどんどんアセトアルデヒドから酢酸に変換されます。
※下の図の➡の方に進むわけです。
この2つの酵素の活性の組み合わせでお酒に対する強さが決まってきます。
さてこれまでの話をまとめて2つの酵素の活性の高低で4つの組み合わせが出来ます。
以下のサイトと大学講義内容を参考にして作りました。
実際はこんなに綺麗に分類できるわけではないですが、1つの目安として、あなたがどこに分類されるか見てみてください。
下の画像はNIKKEI STYLEから引用しました。アルコール分解に関する遺伝子を全国で調べて、酒豪の多い県をまとめたそうです笑
日本酒が有名な東北と、焼酎が有名な南九州は酒豪が多い感じしますね。作物の影響が大きいのでしょうが、お酒が好きだから発展した可能性もありますね。
画像引用

ちなみに私は医学部の生化学実習で実際に自分の口腔粘膜から細胞を取り、PCR等をして、遺伝子配列を見たところ、ADHは中等度,ALDHは活性高いという結果でした。
お酒を楽しめるし、気をつけないとお酒に溺れてしまうという危うい位置でした。まぁたしかに実感としてもお酒は好きだし、日々嗜んでいるので、遺伝子である程度は決まっているというのも納得できます。
皆さんに少しでも面白い!と思っていただければ幸いです。それでは。
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